断念
シェイクスピアをいろいろ読み比べて、ここに書こうと思ったのだが、引用する行が多くて断念する。
読み比べようと思ったのは『リア王』の第二幕第四場の冒頭。足枷をはめられたケント伯とリア王が話す場面。それぞれの会話はYesとかNoとか大変短いものだが、両者の言葉が一種のシンメトリーになっていて面白い。
テキストは新潮文庫(福田恆存・訳)、光文社古典新訳文庫(安西徹雄・訳)、ちくま文庫(松岡和子・訳)、岩波文庫(野島秀勝・訳)の4冊。
引用しようとした箇所に限っていえば、福田訳が一番いいと思う。安西訳は途中から両者が対等の口をきいている。リア王は絶対的な王のはずで、その忠実な貴族のケント伯が対等に話すのは不自然だ。松岡訳は、リア王が「ジュピターに誓って」というのに対して、ケント伯が「ジューノーに誓って」と対照的な言い方をするのがすっかり抜けている。野島訳はおかしいと思うところはないが、福田訳の少し漢語調の言い回しに比べて力強さが欠けるようだ。
こんなことを原文も引用しながら書きたかった。
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