ただいま読書中

マルテの手記 (新潮文庫)

マルテの手記 (新潮文庫)


一度挫折したのだが、『失われた時を求めて』とほぼ同じ時期のパリの話ということで再度読んでいるところ。
でも、訳が古いと感じるところもある。訳者はしがきに昭和24年とある。
ベートーベンやイプセンをリスペクトした箇所では、彼らに対する呼びかけが「おまえ」となっている。当時はいまほど「おまえ」という言葉に下の者に向かっていうニュアンスはなかったのだろうが、いま読むとかなり引っかかる。その箇所はすべて「あなた」と読み替えてみた。
まだ半分も読んでいないが、けっこう箴言めいた文章もある。たとえばこんなところ。

このごろは、誰も心に願いを持つなんてことはなくなってしまいました。けれども、マルテ、おまえは心に願いを持つことを忘れてはいけませんよ。願いごとは、ぜひ持たなければなりません。それは、願いのかなうことはないかもわからないわ。けれども、本当の願いごとは、いつまでも、一生涯、持っていなければならぬものよ。かなえられるかどうかなぞ、忘れてしまうくらい、長く長く持っていなければならぬのですよ。