富士山

冬になると東京湾の向こう側に富士山がよく見える。注意して見ているとその下側から飛行機が飛び立つのが見える。真っ白な、ギザギザの富士山を見て思い出すのが草野心平の詩だ。彼の作品に『富士山』というのがあり、その「作品第参」。
 


  劫初からの。
  何億のひるや黒い夜。
  大きな時間のガランドウに重たく坐る大肉体。


     ああ自分は。
     幾度も幾度もの対陣から。
     ささやかながら小さな歌を歌ってきた。
     しかもその讃嘆の遥かとほくに。


  遥かとほくに。


  ギーンたる。
  不尽の肉体。
  窅しい白い大精神。