「むこうむきになっている おっとせい。」

だんだら縞のながい影を曳き、みわたすかぎり頭をそろへて、拝礼してゐる奴らの群衆のなかで、

侮蔑しきったそぶりで、

ただひとり、

反対をむいてすましているやつ。

おいら。

おっとせいのきらひなおっとせい。

だが、やっぱりおっとせいはおっとせいで

ただ、

「むこうむきになっている

おっとせい。」

 

  ――金子光晴「おっとせい」より